ー意見が割れた9月24日神社本庁役員会ー
東京高裁で全面敗訴した本庁は最高裁に上告するのか?
(「神社新報」令和3年10月4日号の原稿?)
【役員の意見、抜粋】
×田中総長 多数派工作といふ目的が果たして公益通報にあたるのか? 今後の対応について役員から意見を聞き、その上で決議をお願ひしたい。
〇芦原(理事) 檄文の内容に問題はあるが、拡散を依頼したわけでもなく、懲戒解雇は厳しいのではないか。
×荒巻(理事) 神社本庁の敗訴だけが強調されてゐるが、背任行為は認められないといふ判決で、その部分の理解を求める必要はある。公益通報者保護法で違法性が阻却されるといふ論理はをかしく、勝訴は困難だらうが、神社本庁の主張を示すといふ姿勢で上告してはどうか。
×永井(理事) 神職は聖職者であり、一労働者としての労働裁判になってゐることは納得がいかない。このままでは神明奉仕をいかに認識・説明するのかなど、さまざまな影響もあるため上告すべき。
×国分(理事) 公益通報者保護法で保護するにしても、神社界に与へる影響を考へれば相当重い理由が必要なのではないか。確証もなく、調べることもなく告発するのは、神社界の被害との均衡を考へると問題があり、わづかでも可能性があるなら上告すべき。
〇圓藤(理事) 上告には反対。弁護士も逆転勝訴は難しいといふ話で、単なる先延ばしと捉へられる。地方の神社は疲弊し、神職や総代からの神社本庁批判も耳にする。判決を受け入れて大同団結することを期待したい。
〇千秋(理事) 全国の神職、氏子崇敬者は裁判継続を望んでゐない。神職は国法に従ひ、国家の安寧・国民の幸せを祈る立場にあり、訴訟の結論は司法判断に任せるべきで、上告には反対。
〇真庭(理事) 訴訟以前には、当事者も含めて皆さんが親しく話をしてゐたことを思ひ出す。この辺りで仲直りし、役職員一緒に神社界を盛り上げていきたい。
×鍵(理事) 思ひこみや知らなかったといふことを、背任行為を真実と信じるに足りる相当な理由にあたるとするなど、判決は腑に落ちない点が多い。名誉毀損や組織秩序を乱す行為があったことは認められてをり、上告してしっかりと神社本庁の立場を主張すべき。
〇九鬼(理事) 全国の神職・総代は神社界が分断してゐる現状を懸念してゐる。もう一度話し合ふことで、前に進むきっかけを見出したい。難しいかも知れないが、統理を中心に大同団結することが神社界の道だと思ふ。
×飯塚(理事) 神社本庁の立場をはっきりさせるためにも上告していただきたい。
×根津(理事) いづれの選択も勇気が必要。上告し、その結論を真摯に受け止めることが肝心。
×SK(理事以外某) 神社本庁の名誉と秩序を守るためにも広報戦略を真剣に考へなければならない。労働裁判は労働者保護の観点が重視されることや、判決を受け入れた場合の具体的対応など、さまざまなことを考へて結論を出すべき。期限があるので、上告後に改めて対応を講じるといふ選択肢もある。
×KO(理事以外某) 神社界に裁判は相応しくない。今の事象は裁判で争ふこととは何か違ふのではないかとも感じる。神社本庁の立場を示すなら上告し、ここで折り合ひを付けて済ますなら判決を受け入れることになるが、原告が本当は何をしたいのかなど話をする必要もあるのではないか。
×NY(理事以外某) 我々は神職であり、一般の労働者による内部通報と見做すのはをかしい。それぞれの神社で同様の事例があった場合に宮司としていかに対応するのか、また寺院や教会など他宗教を含めた宗教界への影響を考へることも重要。
×KM(理事以外某) 不正や背任行為がなかったといふことを神社界にはっきり伝へるべき。
×小野(常務理事) 今回の事例が公益通報者保護法に適合するのか疑問。さうした法律論のことを含めて上告し、大同団結の糸口にするといふ気持ちで冷静に見守りたい。
〇芦原(理事) 司法に判断を委ねるには馴染まない面もあり、上告は断念した上で、不正が無かったことを評価しつつ、自分たちで解決していくといふ道筋もあるのではないか。
〇西高辻(常務理事) 上告しても我々が求めるやうなフィールドで判決を出してはくれず、門前払ひの可能性が大きい。法律の問題と道徳の問題とを区別し、上告はせずに大同団結を図って解決の道を摸索するなかで、神社本庁のあるべき姿、宗教人としての姿を問ひ直す作業が必要。
×吉川(副総長) 懲戒解雇を含め神社本庁として機関決定をしてきたが、偏った一方的な情報だけが広まってをり、神社本庁が何をしてきたのかを説明していかなければならない。また今後、神社界で同様の事例が生じることも考へなければならず、上告をして多くの方々に御理解いただきたいと思ふ。