五輪疑惑・神宮外苑再開発、不動産廉売~神社界に取り入る政官財の疑惑の人脈~
「スポーツ」と「不動産」で”神の世界”と密接な関係を構築
(週刊ダイヤモンド2022年7月2日号)
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「五輪招致の筆頭であり、文教族のドンとして君臨してきたのが、森氏だ。そして、神社本庁にも文部省(現文部科学省)出身の大物が今年6月まで存在した。10年から神社本庁理事を務めた國分正明氏である。元文部事務次官で、同省で政治との接点が多い高等教育局私学部長や体育局長、大臣官房長などを歴任。森氏が文部相として初入閣した時期(1983~84年)の一部は、國分氏の私学部長時代と重なっている。
加えて、神社界で森氏と懇意とされるのが、神社界のドンこと神道政治連盟(神政連)会長の打田文博氏だ。森氏は首相時代、神政連国会議員懇談会(現会長は安倍氏)の顧問を務め、その2000年の会合のあいさつでかの有名な「神の国」発言が飛び出した。
その打田氏と親交を持つ五輪関係者は他にも存在する。日本オリンピック委員会(JOC)の元副会長だった福田富昭氏である。福田氏が創業した日本メディア・ミックス(現在は社名変更)は、打田氏や國分氏が理事を務める日本文化興隆財団が発行する季刊誌「皇室」を、かつて扶桑社と共同販売していた。また、打田氏が宮司を務める小國神社で土産用菓子を販売したり、同神社に五輪メダリストを派遣したりする間柄だ。さらにJOC元会長、竹田恆和氏もメディア・ミックスの取締役を務めたことがある。
このメディア・ミックスの社長だった人物が同じく社長を務めたディンプル・インターナショナル(現在は社名変更)は、神社本庁の不動産売買を一手に引き受けてきた会社だ。
この売買を巡り、打田氏やその盟友とされる前神社本庁総長、田中恆清氏ら神社界の上層部とディンプルの癒着があったと内部告発した結果、逆に懲戒処分が下された職員2人が地位確認を求めた訴訟があり、最高裁は今年4月、神社本庁の上告を退けて、職員2人への処分無効と未払い賃金の支払いを命じた一、二審判決が確定している。前出の國分氏は、内部告発後に設置された調査委員会の委員長を務めており、「職舎(前出の神社本庁の不動産)の売却は妥当だった」と報告書で結論付けた。だが、東京地裁はその報告書を「採用できない」と一蹴している。
この裁判以外にもその体制下で、神社本庁幹部の不倫疑惑といった醜聞に加え、金刀比羅宮、富岡八幡宮といった大神社の離脱が続いた田中氏について、神社本庁統理の鷹司尚武氏は6月4日付で、田中氏の事実上の更迭を決め、別の人物を新たな総長に指名した。だが、田中氏や一部の事務方は、この決定を不服として、今なお総長を自任しているという。
明治神宮を傘下にする神社本庁内部の混乱が、神宮外苑再開発にも影響を及ぼすのか、神のみぞ知るところだ。」