『花菖蒲ノ會』会報 第11号
「神社本庁代理人弁護士小川尚史氏による『総長選任問題に関する判決の解説』を反面教師に、神社本庁の未来の姿を考へる②」
(令和5年4月15日発行)
統理を支え神社本庁の正常化を目指す『花菖蒲ノ會』の「会報第10号」に続き「会報第11号」が届いたので紹介する。
戦後誕生した「神社本庁」という組織の根幹にかかわる問題である。特に神職諸君は、熟読の上、自らの頭で考え、行動していただきたい。
【憲章制定の目的と敬神生活の綱領、及び庁規との関係】
昭和55年に制定された「神社本庁憲章」は、昭和50年3月、「本庁機構に関する委員会」より、「宗教機能に関する規定」を整備充実されたいとの要望を受けて制定作業が開始されました。庁規との関係について『神社実務提要』(神社本庁編)は、「神社本庁憲章」は団体の基本的規範であり、「神社本庁庁規」は法人の基本規則であると解説してゐます。
神社本庁は、このやうな「憲章」と「庁規」との関係のもとで、目的に掲げる祭祀の振興のための活動を推進し、法人の運営は、本来の活動を支えるためのものであるとして、包括下神社に対しても指導してきたのです。
憲章制定の目的は、前文後段の次の文章に言い尽くされてゐます。
爾来、神社本庁は、全国神社の包括法人として、
庁規を中心に運営されてきたが、今日まで重要
な懸案とされてきたのは、精神的統合の紐帯とし
て、基本的規範を確立整備することであった。よ
って、ここにその大綱を成文化して本憲章を制定
し、以て神祇の祭祀を継承するに遺憾なきを期す
るものである。
つまり、「庁規を中心に法人運営してきたが、団体として大切な精神規範を明文化して、庁規(法人)の上に定めよう」といふことです。
そして、全19条からなる「神社本庁憲章」では、前文に続いて神社本庁の目的を定めてゐますが、第3条において次の通り、その使命を具体的に謳ひあげてゐます。
第3条 神社本庁は、敬神尊皇の教学を興し、
その実践綱領を掲げて、神職の養成、
研修、及び氏子・崇敬者の教化育成
に当る。
「実践綱領」とは、言ふまでもなく「敬神生活の綱領」のことです・・・
・・・前述の通り、第3条は、「神社本庁の教学」について端的に記してゐますが、第5条では、次の通り、統理が神社本庁の代表者であると、明確に記してゐます。
第5条 神社本庁に統理以下の役員、その他の機関
を置く。
2 統理は、神社本庁を総理し、これを代表する。
3 第1項の役員、その他の機関については、規程
で定める。
つまり敬神尊皇の教学に基づく神社本庁の諸活動は、統理のもとに機能してゐるのです。「統理のもとに機能」してゐることを、われわれは肝に銘じねばなりません。
法人としての役割は本来の活動を支へるものでなければならず、それに徹するのが代表役員及び責任役員の務めです。
【「団体の役員」と「法人の役員」】
憲章の第5条3項にある「規程」とは、「神社本庁役員その他の機関に関する規程(以下、役員規程)」のことで、憲章に併せて制定された規程です。
つまり、この役員規程と憲章はセットで、法人(庁規の規定)の上に位置する団体(古来の伝統に基づく神社統合の団体)の根本規範となります。
この規程にある「役員」とは、法人の責任役員ではなく、団体の役員のことです。
本規程の第7条には、次のやうにあります。
第7条 役員及び監事は、評議員会で選任する。
2 総長は、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名する。
この役員規定をうけて、庁規の役員条項(庁規第12条)が規定されてゐるのですから、この点の解釈も小川弁護士や一審判決は、間違へてゐます。
そして極めつけが、神社本庁憲章の第10条1項です。
第10条 神社本庁の議決機関は、評議員会とする。
つまり、団体としての議決をするのは「評議員会」なのです。
役員会での議決による決定は、限定的なもので、乱用は許されないはずです。
そして、憲章の第17条には、
第17条 庁規及び規程等は、この憲章に準拠しなければならない。
附則3 この憲章施行の際、庁規及び従前の規程等は、この憲章に基いて定めたものとみなす。
とあります。庁規以下の諸規程は、この憲章に基づかなければならないのです。
「月刊若木」2月号の解説記事を反面教師として、神社本庁のあるべき姿を考へてきました。
この大切な問題について、皆様も意見を酌み交はしていただければ有難いと思ひます。
「神社本庁憲章」と「神社本庁役員その他の機関に関する規程」を読んでみよう!
[神社本庁憲章]
昭和五十五年五月二十一日 評議員会議決
・神祇を崇め、祭祀を重んずるわが民族の伝統は、高天原に事始まり、国史を貫いて不易である。夙に大宝の令、延喜の式に皇朝の風儀は明らかであるが、明治の制もまた神社を国家の宗祀と定めて、大道はいよいよ恢弘された。
・しかるに、昭和二十年、未曾有の変革に遭ひ、皇典講究所、大日本神祇会、神宮奉斎会は、その対応を相議り、神祇院総裁もまた爾後の措置をこの三団体に委ねた。ここに神社関係者の総意によって、全国神社を結集する神社本庁が設立され、神宮を本宗と仰ぎ、道統の護持に努めることとなった。
・爾来、神社本庁は、全国神社の包括法人として、庁規を中心に運営されてきたが、今日まで重要な懸案とされてきたのは、精神的統合の紐帯として、基本的規範を確立整備することであった。
・よって、ここにその大綱を成文化して本憲章を制定し、以て神祇の祭祀を継承するに遺憾なきを期するものである。
第一条 神社本庁は、伝統を重んじ、祭祀の振興と道義の昂揚を図り、以て大御代の彌栄を祈念し、併せて四海万邦の平安に寄与する。
第二条 神社本庁は、神宮を本宗と仰ぎ、奉賛の誠を捧げる。
2 神社本庁は、神宮及び神社を包括して、その興隆と神徳の宣揚に努める。
第三条 神社本庁は、敬神尊皇の教学を興し、その実践綱領を掲げて、神職の養成、研修、及び氏子・崇敬者の教化育成に当る。
第四条 神社本庁は、総裁を推戴する。
2 総裁は、神社本庁の名誉を象徴し、表彰を行ふ。
第五条 神社本庁に統理以下の役員、その他の機関を置く。
2 統理は、神社本庁を総理し、これを代表する。
3 第一項の役員、その他の機関については、規程で定める。
第六条 祭祀は、報本反始の誠を捧げ、古来の伝統と、別に定める制規に従って厳修する。
第七条 神社本庁は、幣帛共進の伝統を重んじ、神社に本庁幣を献ずる。
第八条 神社は、神祇を奉斎し、祭祀を行ひ、祭神の神徳を広め、以て皇運の隆昌と氏子・崇敬者の繁栄を祈念することを本義とする。
2 霊代の神聖は、厳に護持しなければならない。
3 神符、守札等の取扱ひについては、信仰上の尊厳を汚してはならない。
4 一社伝統の故実、慣習、由緒は、尊重するものとする。
第九条 神社は、祭神、社名、例祭日、鎮座地、その他神社存立の基本に関はる事項については、統理の承認を受けなければならない。
第十条 神社の境内地等の管理は、その尊厳を保持するため次の各号に定めるところによる。
一 境内地は、常に清浄にして、その森厳なる風致を保持すること。
二 境内地、社有地、施設、宝物、由緒に関はる物等は、確実に管理し、みだりに処分しないこと。
三 境内地及び建物その他の施設は、古来の制式を重んずること。
四 前号の施設は、神社の目的に反する活動に利用させないこと。
第十一条 神職は、ひたすら神明に奉仕し、祭祀を厳修し、常に神威の発揚に努め、氏子・崇敬者の教化育成に当ることを使命とする。
2 神職は、古典を修め、礼式に習熟し、教養を深め、品性を陶冶して、社会の師表たるべきことを心掛けなければならない。
3 神職は、使命遂行に当って、神典及び伝統的な信仰に則り、いやしくも恣意独斷を以てしてはならない。
第十二条 宮司は、一社の長として、祭祀に管掌し、社務をつかさどり、神社の信仰と伝統の護持に努める。
第十三条 神社総代は、神社の祭祀、信仰、伝統の保持振興について宮司に協力する。
第十四条 神社の氏子区域は、神社ごとに慣習的に定められた区域をいふものとする。
2 氏子区域は、神社相互に尊重しなければならない。
第十五条 氏子区域に居住する者を伝統的に氏子とし、その他の信奉者を崇敬者とする。
2 氏子・崇敬者は、神社護持の基盤であり、斯界発展の母体である。
第十六条 神社本庁の宗教法人法による規則を「庁規」といふ。
第十七条 庁規及び規程等は、この憲章に準拠しなければならない。
第十八条 この憲章の改廃については、統理の発議により、評議員会において、出席評議員の三分の二以上の賛成を必要とする。
第十九条 この憲章の施行に関し必要な事項は、庁規及び規程を以て定める。
附 則
1 この憲章は、昭和五十五年七月一日から施行する。
2 宗教機能に関する規程(昭和二十七年一月二十七日規程第一号)は、廃止する。
3 この憲章施行の際、庁規及び従前の規程等は、この憲章に基いて定めたものとみなす。
[神社本庁の役員その他の機関に関する規程]
昭和五十五年五月二十一日 評議員会議決
第一条 この規程は、神社本庁憲章第5条3項の規定に基づき、神社本庁の統理以下の役員、その他の機関について定めることを目的とする
第三条 統理については、憲章に定めるほか、庁規第2章第4節にこれを定める
第四条1項 総長は、統理の命を受けて神社本庁の庁務を総管し、統理に事故があるときはその職務を代理する
第五条1項 役員は、役員会を組織して庁務の重要事案について審議する
2項 役員会は、統理が招集する
第七条1項 神社本庁の役員および監事は、神社本庁の評議員会で選任される
2項 総長は、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名する
3項 副総長は、総長の意見を聞いて、理事のうちから統理が指名する
4項 常務理事は、役員が互選する
2項 総長は、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名する
3項 副総長は、総長の意見を聞いて、理事のうちから統理が指名する
4項 常務理事は、役員が互選する
第八条 理事及び監事は、在任中それぞれ宗教法人「神社本庁」の理事及び監事に当る。
第十条1項 神社本庁の議決機関は評議員会とする
2項 評議員会は、庁規に定めるところによりこれをあてる
2項 評議員会は、庁規に定めるところによりこれをあてる
以下省略