『公益通報者守るには-犯人捜し、不利益処分相次ぐ』
(読売新聞令和6年9月18日朝刊)
「『まるで自分のときと同じだ』。全国の神社を束ねる宗教法人『神社本庁』職員の稲貴夫さん(64)(川崎市)は、兵庫県知事をめぐる問題をそう感じている。
裁判記録などによると、稲さんは神社本庁の総合研究部長だった2016年12月、幹部が不正な不動産取引に関与したとする疑惑を文書で告発した。すぐに稲さんを含む職員らへの事情聴取が始まり、17年8月、懲戒解雇された。『根拠がないまま、幹部を誹謗中傷した』ことが理由だった。
稲さんは同年10月、解雇無効を求めて東京地裁に提訴。本庁側は裁判でも『誹謗中傷』『クーデター目的』などと主張した。しかし、地裁は21年3月の判決で『不正があったと信じるに相当の理由があった』と認定。告発の目的も正当だとして、解雇は無効と結論づけた。
稲さんは同年10月、解雇無効を求めて東京地裁に提訴。本庁側は裁判でも『誹謗中傷』『クーデター目的』などと主張した。しかし、地裁は21年3月の判決で『不正があったと信じるに相当の理由があった』と認定。告発の目的も正当だとして、解雇は無効と結論づけた。
判決は22年4月に確定し、稲さんは同年6月に職場復帰した。近く定年を迎える稲さんは『告発したことに後悔はない』と語る一方、通報者を守るには今の制度では不十分だ』と訴えた。」