兵庫県斎藤知事問題と神社本庁問題にみる権力構造とトップの進退
-悪の連鎖が重みに耐えかね断ち切れるとき
(月刊「レコンキスタ」令和6年10月1日号)
「組織の中でトップの地位にある者は、その職責を果たすことが困難な状態に立ち至れば、直ちに身を引くのが当然である。そこに組織的な不正が絡んでいたとするなら、その真相解明や必要な法的措置についての目途がつくまでの間はとどまることはあったとしても、可能かなぎり速やかに辞職するのが通常であろう。ところが現在の日本では、進退問題に関して普通でない場面を至る所で目にするようになった・・・」
「この兵庫県の状況を、東京都内の神社関係者は片津を飲んで見守っているという。というのも、斎藤知事の置かれた立場が、東京都神社庁の小野貴嗣庁長の状況とあまりにも酷似しているからだ。
小野庁長の所業については前号で詳報した通りだ。横領と背任の違いはあるが、部下による犯罪行為であることは間違いない。そして被害者の東京都神社庁は、役員会決議に基づいて、横領したX元主事を刑事告訴しているのだ。
腹心であったX元主事による三千万円を超える横領を見逃した小野庁長の責任は重い。万一、噂されているように横領に関与していたとすれば、今後、小野庁長自身が罪を問われる可能性もある。さらに悪質なのは、X元主事による預金の出し入れに疑問を持ち、犯罪性を確認するために内部情報を持ち出した職員のY氏を厳しく叱責したことであろう。Y氏の行為は公益通報にあたると思われるが、小野庁長は公益通報者保護法に違反してパワハラ行為まで犯したのである。そして小野氏はその後も、適応障害のために出勤が適わなくなったY氏が、あたかもX元主事の共犯者であるかのような作り話を週に振りまいていたというのだから、悪質極まりない。」
「さらに小野庁長の不正行為はこればかりではない。他県への出張に際して、東京都神社庁と神社本庁の双方から、複数回にわたり旅費を二重に受け取っていた事実が判明しているのだ。この件は、六月に開催された協議員会でも報告され、実際に神社本庁からも受け取っていた旅費については、神社庁に返却したようだが、関係者によれば、まだまだ「余罪」があるのではないかという。この旅費の二重取りにX元主事がかかわっていたことは容易に想像できるが、それが事実ならば、小野庁長がX元主事を庇い続け、真相解明を引き延ばし、責任をY氏に着せようと小賢しい手を使っていたことにも納得がいく。真相を知るのは小野庁長とX元主事だけであるが、横領した三千万円の使途も含めて、捜査機関による真相解明が待たれるところだ。」
「七月の協議員会で不信任決議を突き付けられた小野庁長であるが、今も庁長を辞めていない。辞めないどころか、任期が終わるまでその地位にあることが、神社行幹部の間で了承されたという話まで聞こえてくる。そこには神社本庁の田中「なほ在任」総長が、副総長不在の状況の中で、在京の常務理事である腹心の小野常務理事が失脚することのないよう、必死に根回しをしている姿が浮かび上がってくる。
しかし、悪の連鎖も経ち切れるとこが必ず来る。殊に不正と隠蔽を重ねつつ、多くの関係者を巻き込んで膨れ上がった悪の連鎖は、ダムが決壊するように、何時かはその重みに自らが耐えられなくなる時が来る。それは明日かも知れないが、時間が経てば経つほど、被害の程度は計り知れなくなることを、関係者は肝に銘じてほしい。」