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自衛隊OBが靖国宮司に就任
その背景にある神社界の混乱
(「フォーラム21」(令和6年5月10日号)

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「全国約7万8000の神社を包括する神社本庁の"揺らぎ"が収まらない。3月5日、古都・鎌倉を代表する神社の鶴岡八幡宮が、神社本庁からの離脱を明らかにした。3月15日には靖国神社が次の宮司に元海上自衛隊海将の大塚海夫氏(63)に内定したと発表し、大塚氏は4月1日に就任した。
鶴岡八幡宮の離脱理由は、吉田茂穂宮司(81)が「鷹司(尚武)統理様(78)をないがしろにするような神社本庁にいる意味がない」と宮司仲間に語った言葉で明らかなように、2期6年の慣例を無視して3期15年も総長職にとどまっている田中恆清(80)への反発である。
鷹司統理は、22年5月末の役員会で、4期12年、総長を務めた田中氏に、「田中さん、ご苦労様」と声をかけて新総長に北海道旭川神社宮司の芦原高穂氏(71)を指名した。ところがこれを不満とした田中氏サイドは「役員会は芦原氏を選任しなかった」として田中体制の存続を決めた。不服として芦原氏サイドは総長の地位確認を求めて訴訟を起こし、一、二審とも敗訴で、現在、最高裁で審理中だ。
自衛隊OBの靖国神社宮司への就任も、こうした神社本庁の騒動が背景にある。有力神社宮司が開設する。
『靖国(神社)の歴代宮司は、国のために殉難した人の霊を祀るという性格から旧華族が宮司を務めることが多かった。しかし一連の鷹司統理への"仕打ち"から、(旧華族の親睦団体である)霞会館が神社界に距離を置くようになりました。そんな人材不足も自衛隊OB招致の理由のひとつでしょう。』
田中総長は宗教法人神社本庁のトップではあるが、その上に宗教団体としての神社本庁を束ねる『統理』という役職があり、18年5月からその職にあるのが五摂家のひとつ鷹司家の当主で、上皇陛下の甥にあたる鷹司氏だ。
鷹司氏は、『総長は、役員会の議を経て、理事のうちから総長を指名する』という神社本庁規第12条の規定によって芦原氏を総長に指名した。ところが田中氏サイドは『議を経て』とは多数決のことだとして異議を唱え、総長職に居座った。
多くが保守思想の持ち主で「敬神尊皇」を基本とする神職にとって統理は別格で、大半が「統理さま」と尊称をつける。「ないがしろにしたから」という鶴岡八幡宮の吉田宮司の離脱理由にそれは表れており、そんな空気が神社界に人材を供給する旧華族にも醸成されているということだろう。
では、鷹司統理の反発を受けても田中氏が総長職に居座るのはなぜだろうか?・・・」

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