議会制民主主義を成り立たせるのは、規範の順守と自立した代議員の見識である!
-神社本庁評議員会がその使命を果たすためにー
(月刊「レコンキスタ」令和7年5月1日号)

「ー神社本庁の「違法状態」は収束するかー
権力の乱用は、人を傷つけるだけでなく、社会規範を混乱に陥らせる結果ともなる。兵庫県の例は特異ともいえるが、紆余曲折はあったものの、最終的には県議会が役割を果たし、斎藤知事の横暴に終止符を打つことになるだろう。
これに対し神社本庁の田中総長による、全く同根の組織運営は、問題の発覚より十年目を迎えようとしている。ここまで解決が長引いた最大の理由は、評議員会が機能しないことだ。
田中氏も齊藤知事同様、公益通報の当事者を探し出して、部長級であった二人の職員を懲戒処分に処した。その処分は不当であるとして職員が提訴し、令和4年4月、最高裁で処分を無効とする裁定が下されたが、田中氏は責任を取らず総長の地位にとどまるために強硬手段に出た。役員改選を行う臨時役員会において、田中氏を総長には指名しない鷹司統理の姿勢が示されると、役員の多数決を根拠に総長の居座りを図った。統理から総長の指名を受けていた芦原理事は、自身が総長であるとして判断を司法に委ねたが、宗教団体の内部規範には関与しない司法の判断によって、芦原氏の主張は認められなかった。
本来ならここで、神社本庁の議決機関として設置されている評議員会に、その判断がゆだねられるべきであるが、それに真っ向から反対し阻止し続けたのが、田中氏とその傀儡である北山評議員会議長であった。議長自ら、議会の役割を否定したことになるが、これら一連の行為は、神社本庁憲章をはじめとする基本規範に悉く背くものである。
田中氏は統理の意向を完全に無視し、評議員会では、良識ある議員の提言を聞き流して平然と自己の正当性を主張し続けてきた。田中氏側は、百合丘職舎売却をめぐる告発者らの行為をクーデター呼ばわりしたが、今度は芦原理事及びその支援者の行為をクーデター呼ばわりした。
田中氏が実際にやってきたことは、弁護士の特異な見解を根拠に、神社本庁が設立以来議論を重ね築き上げてきた規範を否定することであった。これこそ、神社本庁組織の破壊行為である。
総長選任をめぐる裁判で芦原氏は敗訴したが、それはあくまでも代表役員の地位をめぐる司法判断であって、判決内容を踏まえても、統理による総長指名権が、司法判断の及ばない宗教団体の規範として存在していることは、神道人にとっては自明のことだ。これが無ければ、神社本庁は何をもって全国の神社を包括するというのか。五月の評議員会で、神社界の良識が示されることを期待する。」